原子核物理・核データの研究

研究テーマ1 原子核物理・核データの研究

 粒子加速器で発生する高エネルギー粒子ビーム(陽子、中性子、電子などのミクロ粒子)は、素粒子・原子核物理の基礎科学分野ばかりでなく、エネルギー・環境・医療・宇宙・新素材開発などの様々な応用分野へその用途が広がっています。
 例えば、エネルギー分野では、放射性廃棄物の加速器駆動核変換やエネルギー増幅システムの開発、医療分野では、陽子線がん治療アイソトープ製造、電子デバイス分野では、半導体メモリーの放射線損傷評価などがあります。
 こうした粒子線の高度利用分野では、加速器施設のしゃへい設計や人体への照射線量評価に不可欠な基礎データとして、高精度原子核反応データが要求されています。
 核反応データや核反応理論モデル計算を利用することで、高エネルギー粒子線の物質中での輸送挙動を精度よく予測できるようになることが期待されています。

重陽子入射核反応に関する研究

 Li, Be, C等を標的にした重陽子加速器中性子源が、医・理工分野(医療用RI製造BNCT核融合材料照射不安定核ビーム生成など)で提案されています。
 重陽子加速器中性子源設計に関連した重陽子入射核反応の研究を実験・理論両面から行っています。
 九州大学タンデム加速器施設を利用した5~14MeV重陽子入射による厚い標的からの中性子生成に対する系統的な測定を実施しており、今後、実験データが不足している100MeV以上の中性子生成実験を、阪大RCNPにて実施する予定です。また、重陽子入射反応特有の分解反応や核子剥ぎ取り反応を厳密に考慮した理論モデルを適用した専用コードシステムを開発し、重陽子分解過程を含む核反応機構の全容解明を進めています。

放射性廃棄物の核変換に関する研究

 原子力発電で発生した放射性廃棄物の減容化及び有害度低減に向けて検討が進められている処理処分技術の1つに核変換があります。
 その技術確立のためには不安定核の核変換に関連した核反応データが必要となります。
 長寿命核分裂生成物の大幅な低減・資源化に関連した本格的な核反応データ測定を世界に先駆け、理研の実験施設RIビームファクトリー(RIBF)を利用した共同実験として行っています。
 なお、本研究は、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として実施されています。

核融合炉工学に関連した研究

 例えば、核融合炉ブランケット内で起こる中性子相互作用に関する研究です。
 ブランケットの主要な構成元素はLiやBe等で、これらの原子核は少数核子(10個以内)からなる量子多体系のために原子核物理的にも面白いテーマです。
 軽い原子核の分解反応を考慮した離散的チャネル結合(CDCC)法による計算手法の開発を行い、それを用いた理論計算により核反応断面積データベースの構築に貢献しています。

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