半導体デバイスのソフトエラー研究
研究テーマ2 半導体デバイスのソフトエラー研究
原子核・放射線物理と電子デバイス工学との学際・融合領域に位置付けられる研究です。
ソフトエラーとは、下図に模式的に示すように、中性子、陽子、パイ中間子などの高エネルギー宇宙線粒子が半導体デバイスに入射し、シリコン原子核と相互作用を起こし、発生した電荷によりメモリー情報が反転し、誤動作を起こす現象(シングルイベントアップセット:SEU)です。
次世代半導体デバイスの超微細化や高密度化に伴い、環境中の宇宙線(宇宙線中性子)に起因するソフトエラー発生が危惧され、その対策の重要性が指摘されています。地上における宇宙線中性子のエネルギーがMeVからGeV領域まで広がっているために、ソフトエラーの予測精度を高めるために、高エネルギー領域の核データや理論モデルが鍵を握っています。
そこで、当研究室では、最新の原子核物理の知見に基づく核反応モデルの開発(実験も含む)や二次イオントラックの微細構造を考慮した発生イオンの空間分布計算の精密化に主眼をおいたソフトエラーシミュレーション技術の高度化に取り組んでおります。
地上だけでなく、宇宙機器搭載のデバイスにも応用可能です。
STARC(㈱半導体理工学研究センター)と実施した産学連携共同研究(2009-2011年度)により、核反応ならびに生成二次イオンの輸送をPHITSコードで計算し、付与電荷のデバイス内輸送を汎用3次元デバイスシミュレータ(HyENEXSS)で取り扱う国産マルチスケールシミュレーションコードシステム”PHYSERD”を開発しました。PHYSERDは産業界でも使用され、ソフトエラー実験との比較や耐性デバイスの開発に役立っています。また、阪大RCNPの加速器中性子実験施設を使って阪大グループと最先端デバイスに対するソフトエラーの共同実験や解析を行っています。
さらに産学連携の枠組で、九大筑紫キャンパス内でボナー球検出器を用いた宇宙線中性子計測を実施し、コンクリート建屋内での中性子束分布の実測を行い、建屋のフロア依存性等を調査しています。最近では宇宙線中性子だけでなく宇宙線ミュオンによるソフトエラーも危惧されつつあり、その影響についてもPHYSERDを用いたシミュレーション研究を始めています。